日本の大学や専門学校で学ぶネパール人留学生を見て、「お金持ちなんじゃない?」と感じたことがある人もいるかもしれません。
最新のスマホを使い、洋服に気を遣う姿を見れば、そんな印象を持つこともあるでしょう。
でも実際のところ、そのイメージは本当なのでしょうか?
この記事では、「ネパール人留学生=金持ち」という噂の背景にある誤解や、日本ではあまり知られていないリアルな事情について、解説します。

ネパール人留学生の背景について理解できますように
ネパール人留学生=お金持ち?そう見える理由

ネパールは経済的には発展途上国に分類されますが、そんな国からやってきた留学生が日本で普通に生活している姿を見ると、「なぜあんなに余裕があるの?」と感じる人も少なくありません。
なぜネパール人留学生が“お金持ち”に見えるのか、その理由について考えてみましょう。
学費を払えている=裕福な家庭の出身?
まず多くの人が疑問に思うのが、「高額な留学費用をどうやって払っているの?」という点。
日本の専門学校や大学に通うためには、学費だけでも年間数十万円から100万円以上かかることもあり、さらに生活費も必要です。
このことから、「それだけ払えるということは、裕福な家庭出身なのでは」と思われがちです。
ブランド服やスマホを持っている印象
一部のネパール人留学生が、iPhoneやブランドのバッグ・服などを持っているのを見て、「お金に余裕があるのかも」と感じることもあるでしょう。
しかし、実際には中古品やセール品をうまく活用していたり、日本でアルバイトをしてコツコツと購入したりしていることが多いのです。
仲間や家族からのおさがりの可能性もあり、見た目だけでは経済状況はわかりません。
外食やレジャーも多そうに見える?
SNSで、外食や旅行、遊んでいる姿の投稿が多く見られると、「毎日遊んでばかりいるのかな?」と感じてしまう人もいるかもしれません。
ですが、投稿はほんの一部の楽しい瞬間を切り取ったもの。
実際はアルバイトと勉強に追われる毎日で、休みの日のたまの楽しみをSNSにアップしているだけということも多いのです。
見た目やライフスタイルの一部だけを切り取って、「金持ち」とは判断できません。
次に、ネパール人留学生の多くが抱えている、リアルな経済事情や苦労について詳しくご紹介します。
派手に見えても現実は厳しい?ネパール人留学生のリアルな暮らし

ネパール人留学生が“お金持ち”に見えるのは、あくまで表面的な印象に過ぎません。
実際には、日本での生活を成り立たせるために、日々努力し、ギリギリの中で工夫を重ねて暮らしている人が大多数です。
留学資金は借金から?家族の大きな負担があるケースも
ネパールでは、留学するために親や親戚が借金や土地の売却をして費用を捻出することが少なくありません。
数百万円にもなる学費や保証金、航空券、初期の生活費などは、現地の平均収入からすると非常に大きな金額です。
つまり、「お金があるから留学できる」のではなく、「無理をしてでも送り出している」というのが実情です。
アルバイトで学費と生活費をまかなう日々
日本での留学生は週28時間までアルバイトが可能とされていますが、ネパール人留学生の多くはその限界まで働きながら生活費や学費を稼いでいるのが現実です。
例えば時給1,200円の場合、1日4時間、週5日働いても月に10万弱。それで家賃、食費、学費を支払わなければならないのは、かなり生活がギリギリになるでしょう。
体力的にも精神的にも大変な日々を送りながら、勉強と仕事を両立していると考えられます。
贅沢ではなく「必要最低限の工夫」で乗り切る
日本に来たばかりの頃は、生活の物価の高さに驚くネパール人も多いです。そのため、節約術は必須。
・古着屋で洋服を購入
・自炊を徹底し、米や豆をまとめ買い
・家をシェアして、少しでも家賃を抑える
といったように、無理なく続けられる生活スタイルを自分なりに確立しています。
ブランド品や高価なスマホを持っていても、それは「一生懸命貯めて買った、長く使う大切なもの」という場合も多いのです。
一人の留学に家族全員が力を注ぐ。ネパールならでは家族の形

ネパールでは、個人の進学や留学は「家族全体の夢」とも言われています。
1人の成功のために、親だけでなく親戚・兄弟姉妹までもが協力し合うという文化が根づいています。
この背景を知ることで、ネパール人留学生の見え方が変わってくるかもしれません。
留学は「一族のプロジェクト」
ネパールでは、家族の中から1人でも海外で成功することができれば、残る家族にも良い影響が広がるという考え方があります。
そのため、親だけでなく、祖父母・親戚・村の仲間までもが協力してお金を出し合い、1人の子どもを日本に送り出すということも珍しくありません。
ときには家や土地を担保にしてお金を借りるケースもあり、それほどまでに「海外留学」は一家の一大プロジェクトなのです。
「帰ってきたら家を建ててほしい」…期待とプレッシャー
家族からの支援を受けて留学している学生たちは、「絶対に失敗できない」という強い責任感を背負っています。
「日本で成功して仕送りをしてほしい」「戻ってきたら家を建ててね」などと期待されることもあり、それがモチベーションになる一方で、大きなプレッシャーとなることもあります。
外からは「自由そう」「お金に困ってなさそう」に見えても、内面では葛藤を抱えている留学生は少なくありません。
「助け合い」があたりまえの文化
ネパールの家庭やコミュニティでは、「自分だけ良ければいい」という発想は少なく、助け合いが当然という価値観が根づいています。
そのため、家族の誰かが困っていれば進んで支援するし、その見返りを求めることもほとんどありません。
日本とはまた違う家族の形に、驚く日本人も多いのではないでしょうか。
このような背景を知ると、「ネパール人留学生=金持ち」というイメージが、どれほど一面的なものかがわかってきます。
「金持ち扱いはつらい」ネパール人留学生のリアルな本音

表向きには元気に見えても、ネパール人留学生たちが感じている心の中には、日本人にはなかなか伝わらない孤独やプレッシャー、誤解に対する悩みがあります。

ここでは、実際の留学生たちから聞いた声をもとに、リアルな声をいくつか紹介します。
「贅沢してると思われるのが悲しい」
「アルバイトをしながら学費と生活費を自分で払っている。でも、iPhoneを持っているだけで余裕がありそうだと思われる。実際は生活がギリギリ…」
ネパール人は大のiPhone好き。自国に住むネパール人でもiPhoneを愛用している人が多数います。
ちょっとした持ち物で「金持ち」と思われることに戸惑っているようです。
「親に頼ってると思われたくない」
「家族総出でお金を集めて、ようやく留学ができた。今は自立して生活しているが、日本の友人からは仕送りがあると思われている」
親の支援を受けて甘えていると思われるのがつらい様子。
実際は支援のおかげで留学が実現したことに感謝し、自立に向けて必死に頑張っています。
「勉強と仕事、両方こなすのは本当にきつい」
「朝から授業に出て、夕方から夜中までアルバイト。帰宅してレポートを仕上げて…寝る時間は4時間くらい。それでもやり切るしかない」
ネパール人留学生の多くは、週末も休まず働いているため、日本人学生よりハードな生活を送っている人も少なくありません。
それでも家族や自分の夢のために、苦労を表に出さずに懸命に頑張っていることが多いです。
ネパール人留学生たちは、自分自身の目的のためだけでなく、家族やふるさとの期待を背負って異国の地で奮闘しています。
では、ネパール人留学生をより理解するにはどうすればよいのでしょうか。
ネパール人留学生を正しく理解するために

ネパール人留学生をはじめ、外国人留学生たちの生活を見ていると、「自分たちより余裕があるのでは?」と思う瞬間もあるかもしれません。
ですが、その印象の裏には、想像以上の努力や不安、そして強い責任感が隠れています。
ここでは、日本側が持ちがちな誤解と、それをどう乗り越えていけるかを考えてみましょう。
一部の印象で「全体」を決めつけない
どの国にも裕福な家庭は存在しますし、実際に経済的に余裕のあるネパール人留学生もいるかもしれません。
ですが、それがすべての人に当てはまるわけではありません。一部の目立った存在だけを見て、「ネパール人=金持ち」とラベリングするのはとても危険です。
日本人でも人それぞれ事情が違うように、外国人も背景や暮らしぶりは多種多様です。
異文化理解は、ちょっとした「想像力」から始まる
「この人はどんな理由でここにいるんだろう?」「どんな毎日を送っているんだろう?」と少しだけ想像してみることで、相手への見方はぐっと柔らかくなります。
お金持ちに見えるかもしれないその背後には、誰にも見せない涙やプレッシャーがあるかもしれません。
国籍や見た目だけで判断せず、個人として向き合う姿勢が、お互いの理解を深めるのに大切です。
小さな交流が、大きな理解を生む
学校や職場でネパール人留学生と接する機会があれば、ちょっとした声かけや会話から関係を築いてみましょう。
彼らの多くは、日本人との交流を望んでいますし、文化の違いを楽しむ気持ちを持っています。
より親しくなることで、実際の生活やネパールの家族との関係性など、背景が見えてくることもあるはず。
まとめ

ネパール人留学生が「お金持ち」に見えるのは、ほんの表面的な印象にすぎません。
その多くは、家族や親族の大きな支えのもと、厳しい生活の中で努力を重ねながら夢を追いかけています。
見た目や一部の行動だけで判断するのではなく、その背景にあるストーリーや思いに目を向けることが、異文化理解の第一歩になるでしょう。

少しだけ視点を変えることで、お互いをもっと深く知るきっかけになるかもしれませんね。


